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行事紹介
 
行事報告

 

 

 
 

活性化推進小委員会 行事報告

 
「with Dam Night 2023 導流・減勢編」
放映の報告


活性化推進小委員会 小委員長 川崎 秀明

1.with Dam☆Nightの目的

 “with Dam☆Night(ダム好学の夜)”は、2010年にダム工学会20周年記念事業として
開始して以降、当学会と一般市民を結ぶ活性化の重要な役割を果たしており、
全国地域別開催の当学会恒例の行事に発展しています。
ただし東京開催は、2021年から「ダムオデッセイ(ダム探求の旅)」と題してテーマ性のあるスタジオ放映方式に変更しています。

 新機軸第3回目の今回は、ダムファンに人気の高い一方でその理解には
専門的知識が必要とされる「導流・減勢」をテーマに取り上げ、
2023年7月14日夕方に開催した。
結果として、「中身の濃い内容を面白く学べる」という点で意義あるものとなりました。
これらは関係者の努力と協力の賜物です。

2.2023年ダム探求の旅の準備

 全面web放映に切り替えた新シリーズの2021年は
ダム再生工事をテーマに前半1時間はダム愛好家の夜話2題、
後半2時間でゼネコン4社の事例紹介と質疑を展開しました。
2022年はゲートをテーマに前半1時間はダム愛好家と小生による夜話2題、
後半2時間でゲートメーカー4社の事例紹介と質疑を展開しました。
これら2回とも、専門性の高い内容であったが、
ダムファンとダム関係者の多数のweb参加を得て、好評を得ました。

 第3回目の今年はダムファンの要望の高い反面、
水理的知識が必要な「導流・減勢」を テーマに開催しました。
準備は、昨年同様に筆者と夜雀(ダム愛好家)さんが進め、
第1部約1時間でダム愛好家らによる3つの夜話、第2部約2時間で
高須講師講演による基礎編、ダム別の水理設計の問答編ということで企画しました。

 6月上旬にチラシ(おもて面を図 1に示す)の事前配布を行い、
並行して発表者による講演資料作成を進め、7月7日午後には入念なリハーサル行いました。
前々日には、約200名の参加登録者(昨年360名)に対して
Webセミナー用URLを送信するとともに、水理基礎知識をまとめた資料を作成して
ホームページ上のURLを示して、希望者は事前に勉強できるようにしました。

3. 実施概要

 表 1に実際の構成を示します。
本番は、出演者と実施スタッフの協力をもって、予定通りに終了し、
視聴者からは内容の難しさにもかかわらずうまく捌けたとの好評価が多くありました。
当方としても義深く実施できたと思っています。

 なお、Web参加数は、19時半頃にはピークの200件弱に達しましたが、
昨年のピークで約260件には足りませんでした。
当web行事の申込み数自体が昨年の約6割であったことが主因と考えられますが、
改善点はいろいろあるはずであり、今後の課題を本稿末にまとめています。

 
図1 with Dam☆Night 2023 事前配布チラシ
 
表1 2023年7月14日開催 with Dam☆Night 2023
の実施構成、時間は実際の進行に基づく

番組構成、出演者・スタッフ、スタジオ状況
テーマ:
「ダム探求の旅 導流減勢編」
日時:
2023年7月14日(金) 18:00~21:00
発信場所:
ダム技術センターAB会議室(スタジオAB)
主催:
ダム工学会
(事務局 ダム技術センター)
後援:
日本ダム協会、
建設コンサルタント協会、
ダム工事総括管理技術者会

1.18:00 開会挨拶
ダム工学会会長 川﨑正彦((一財)ダム技術センター 研究顧問、前田建設工業(株))
 オープニング映像 制作:萩原雅紀  18:01~18:03

2.18:03~19:08 第Ⅰ部「カッコいいダムの背中」  
  夜話1「カッコいいダムの背中」 夜雀(ダム愛好家) 
  夜話2「飛び出せ!世界の洪水吐き」 萩原雅紀(活性化小委員長) 
  夜話3「導流と減勢の歴史」 エンジニアス川崎(活性化小委員長) 

  休憩(約12分) 19:08-19:20  ゲート工事映写(八ッ場ダム、大林水門、天ヶ瀬再開発)   

3.19:20~20:58 第Ⅱ部「導流減勢の美と技の面白探求」
  19:20~19:26 主催者挨拶 ダム工学会会長 (川﨑正彦)
  19:26~20:00 1.基礎編  「導流・減勢に係わる基本的事項」高須修二 講師  
  20:00~20:57 2.問答編<登場ダム> 
小石原川ダム(階段式のシュート)、村山下ダム(階段式減勢工)、
比奈知ダム(天端側水路)、横瀬川ダム(中段側水路式減勢)、
大山ダム(典型的な側水路減勢)、猿谷ダム(減勢池の曲線傾斜導流壁)、上椎葉ダム(左右両岸のスキージャンプ)、
御母衣ダム(曲線シュートの洪水吐き)、
坂本ダム(段違い自由越流)、殿山ダム(クレスト+オリフィスの大容量ゲート群)、長谷ダム(典型的な漸縮導流壁)、志津見ダム(完全な全面越流)、丸山ダム(洪水量と減勢の関係)、
長安口ダム(フリップバケットから副ダム減勢へ)、
立野ダム(流水型ダムの減勢工)、清水沢ダム(自然の滝風の設計)  

  閉会の辞
 
  実行スタッフ
  共同ディレクター:川崎秀明(活性化小委員会)、夜雀(ダム愛好家)
  出演者:(上記2名)、高須修二(専門家)、萩原雅紀(ダムライター/インフラ見学系YouTuber)
  司会:磯部祥行(編集者・都市鑑賞者)  
  放映・設営・会計・購買・広報等の実施:ダム工学会有志(佐藤公治、酒井匠、秋場章郁、ほか)
 
開催前のスタジオと開催直後のスタジオ



3.各公演内容の紹介


 3.1 オープニング「wDN2003導流減勢編」(図 2)  制作 萩原雅紀 

 今年は動画サイトの主催者でも有名な出演者の萩原さんに依頼して
オープニング動画を制作してもらいました。
連続して現れる迫力ある美麗放流が音楽とともに次々と描き出されました。
送信容量の制約はあったが、動きはほぼ満足できるものでした。

図 4 オープニング映像の画面

第Ⅰ部 カッコいいダムの背中
 夜話1「ダムの背中」(夜雀講師、図 3)

 ダムの下流面において如何に大量の洪水の水脈を流すかが、今回のテーマであり、
そのためにどういうことが為されているかを導流の減勢の実例写真と図でもって説明して頂きました。
ダム愛好家仲間から収集された写真も大変見応えありました。 博識にして好学心旺盛な夜雀女史の探求姿勢には毎回敬服いたします。

図 3 夜雀さん講演の画面



  夜話2「世界の洪水吐き」  (図 4、萩原雅紀講師)

 ダム愛好家が注目され始めた20年以上前から代表的存在として
イベント、著作、映像で活躍し続けている萩原さんです。
内容は世界の奇妙にして絶景の洪水吐きを紹介するもので、驚きの連続でした。
国内でもこういうものを作れたら最高です。

図 4 萩原さん講演画像



 夜話3「導流と減勢の歴史」(図 5、川崎講師)

 洪水吐きの歴史を遡って概観すると、
古代からダムの安全性に強く係ってきたのが判ります。
また、近代ダムにおける階段式シュート部の原点、中島鋭治先生の水理思想が
現代水理設計の基本となっていること等を説明しました。

図 5 エンジニアス川崎講演画像



第Ⅱ部 「導流減勢の美と技の面白探求」
 主催者挨拶 (ダム工学会会長 川﨑正彦、図 6)

 次々に大水害が発生し近年の状況から、 近年の地球温暖化の現象と
洪水の関係を述べて、 「ダムによる洪水調節の必要性が増大しており、
ダムの果たす役割はますます重たくなっている。
ダム再生や新規ダム建設についても今後増える。
今回with Dam Nightは市民の理解を高めるために非常に重要。」 との挨拶が
川崎新会長から為されました(図 6)。

図 6 ダム工学会会長の主催者挨拶の画像


 基礎編 「導流・減勢に係わる基本的事項」  (高須修二講師)、 図 7)

 第2部は、水理設計の現最高の大家である高須講師による講義から開始しました。
内容はダム愛好家の事前の意見や質問に沿ったもので、下記項目の約30枚の資料が
同講師自らの手で作成されました。

 ダム水理設計技術の変遷、河川管理施設等構造令での規定、
導流部末端部の堤体及び下流河床の保護、減勢工の範囲、
典型的な跳水式減勢工・流況、 跳水式減勢工の流況の概念、減勢工下流の流況、
副ダムの無い減勢1,2、水叩きと副ダムが離れた減勢工、
常用・非常用に分離した減勢工、分離壁を設けた減勢工、
各種放流設備に応じた減勢工、導流部での階段式減勢工、
アーチダムのスキージャンプ式洪水吐き、フィルダムのスキージャンプ式、
典型的な自由落下式・流況、自由落下水脈の制御、堤趾導流式の洪水吐き・流況、
堤趾導流水路内の改善策、典型的な堤趾導流壁例1,2,側水路減勢工、天端側水路」

  本番では高須先生の説明と司会の磯部さんによる確認による掛け合いを主とし、
時々他の出演者が質問することで進められました。
形状や配置における素朴な疑問に対して、 水理的なメカニズムを
どう説明するかが大きな課題でしたが、視聴者の反応は良く、
どうやらうまく説明できたのではと思います。

図 7 高須修二講師講演時の画像


 問答編 「導流と減勢、事例で学ぶ」 

 個別16ダム(図 8~図 10)について司会の磯部さんが 導流・減勢上の特徴を
資料でもって説明した後に、 出演者4人で面白く質疑問答を行いました。
以下に盛り上がり状況を記します。

(1) 小石原川ダム:階段式のシュート部は減勢効果がありそう、最近多いの?
→そうでもない、大流量時にどうだろう

(2) 村山下ダム:階段式減勢工は余り使っていない?
→非常用だから、各段にプールができるので減勢が効きそう

(3) 比奈知ダム:天端側水路は減勢に効くの?
→導流用だから効かない、階段で降りて見学できる

(4) 横瀬川ダム;中段減勢?
→通常の減勢工が設置できず採用された、下から見ると林立するジグザグ擁壁が減勢に効果的(サクラダ・・・)

(5) 大山ダム(典型的な側水路減勢):堤趾導流壁で受けて減勢する、シュートブロックも効果的

(6) 猿谷ダム:減勢池の曲線傾斜導流壁はどうしてこんな形状に?
→直下流屈曲で副ダムが遠いのでそうなった、千葉県某ダムにもある

(7) 上椎葉ダム:左右両岸のスキージャンプは300 m3/s放流したら交差するが滅多に見られない

(8) 御母衣ダム:曲線シュート洪水吐きの典型的例、ドラムゲートが面白い、仮排水トンネルを使った洪水吐きの方がメイン

(9) 坂本ダム:段違いの自由越流はカッコいい、段違いにしたのは水脈を中央に寄せたかった?
道路が復旧したので行けるようになった

(10) 殿山ダム:クレストとオリフィスの大容量ゲートの隣接配置がすごい、大断面オリフィスを見てコインは驚いた、水脈の勢いがすごい

(11) 長谷ダム:典型的な漸縮導流壁、ここまでブロックをまたぐと施工は面倒だが却って美しい

(12) 志津見ダム:夜を徹して試験湛水を見に行った、天端橋梁も無い完全な全面越流、堤趾導流壁の2方向のブロックが減勢に効いている

(13) 丸山ダム:300,1300,3500,4200,4500m3/sの洪水量と減勢の関係が良く判る、4500m3/sでも減勢池内になんとか収まっている

(14) 長安口ダム:フリップバケットから下流に飛ばしていたが
再開発で副ダム跳水式減勢に変更した、 新設右岸導流壁は3000m3/s放流時も機能している、下流では白波が消えて減勢している

(15) 立野ダム:流水型ダムの減勢工で左右非対称の形が面白い、堤体が打ち上がったばかりだが5月の洪水で活躍した

図 8 導流と減勢、事例で学ぶ1
図 9 導流と減勢、事例で学ぶ2
図 10 導流と減勢、事例で学ぶ3


 清水沢ダム(図 11)

 時間調整予備のため筆者が3本の事例を用意していたが、 時間が
予定より押して 20:51となったところで 最後の7分間で清水沢ダムの
自然の滝風の設計の実践例を紹介しました。
「皆さん見に行きたいね(できれば直下流の島から)」という所で、
司会に渡して21時の2分前に終了となりました。  
その後すぐ思い出しましたが、恒例の「ダムラブ💛」のweb斉唱で
最後の締めを行うのを忘れてしまいました。
次回は忘れないように。  

図 11 清水沢ダムの画像

 

★総括 

 関係各位の協力のお陰で、
「専門性のある高度な内容でもっても面白く楽しく勉強になる。」
という目標からすると、 今回は大成功でありました。

 ただし、一昨年250件、昨年の360件と比べると、 今回参加登録数の200件はもの足りなかったと言えます。
内容的に難しい思われたため、 避けられたという面はあるかもしれませんが、
with Dam Nightの主旨は、一般の方、 ダムの専門家双方に役立つことを
狙っているので、 イベントのターゲットとしては間違っていないと思われます。

 ダム工学会活性化小委員会としては、他の地区の活動が終わった時点で、
再度議論して、来年度活動への改善に持って行きたいと考えています。

 最後に、実行スタッフ、出演者、ダム工学会の関係各位の支援に
心から感謝申し上げます。 また、後援各位(日本ダム協会、
建設コンサルタンツ協会、 ダム工事総括管理技術者会等)、及び会場・人員提供の
ダム技術センターに心から感謝申し上げます。
最後に、Web参加の視聴者の皆様に対して心からの謝意を表します。


図12 終了後の出演者の写真


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